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ろが、溜まった石鹸水の中で洗われただけでは、今度は日本人の方がきれいになっていないと思う。実はあまり汚くないのでありますが、これが文化の差です。この時に、実は水道の水の出方を少々加減をしておきますと、これは実験をしたわけでありますが、流水で洗っても溜まり水と同じぐらいの水で洗えるという証明をやって、「あっ、そうか」といって納得してもらった事があります。
その様に、実は人々の交流の中で違いをお互いに認めながら、なぜこうなるのだという事をお互いに理解するということによって、実は交流というものが意味のあるものになってくるわけでありまして、今、観光というものがまだ交流というレベルにきていないのは、やはり表面的な人のつきあい、丁寧にあいさつをし、そしてにこやかに別れるというだけで、そこでお互いの生活同士がぶつかり合うというところまでいっていないという事が現実としてあるのではないかと思います。日本の場合には、先ほど言いましたように遊びの種類が非常に少ない。パチンコか若い衆のいるゲームセンターか、そんなものしかない。
最も、これも外国の人にパチンコを案内すると結構喜ばれたりする。最近評判のいいのは3D(立体視)のコンピューターおばけ屋敷、あれは外国の人にも評判がいいです。20分で600円取られますが、現代人に合わせてスピーディーでよろしい。もうじきバーチャルリアリティーのおばけ屋敷が出るそうでありますが、あれは恐いだろうと思います。
こういう様なものも出てまいりますが、やはり基本になりますのは人と人との交流であろうと思います。そして同じように共通したものは、いいものを見、そしておいしいものを食べるという事になってくる。そのための市民の訓練というものは、ほとんどプログラムとして無いわけであります。今、大阪では古い大阪の地名でありますとか、伝承というものを語れる人、これは別に観光とは関係なしに始めたことなのでありますが、大阪という土地は昔から大阪に住んでいた人というのが非常に少なくなっております。九十何パーセントという人が外から来た人でありますから、大阪の100年前の話もほとんど伝わっていない。ヨーロッパになるとこれは本当にすごいです。どこの街に行っても、「これは何の像ですか」と聞けばいくらでも説明してくれます。モニュメントが街中にありますから、それでしかも時代がすっ飛んでいるでしょ。ナポレオンが持ってきたものから、もっと昔のシーザーの時代の小屋まで、本当か嘘か知らないが、そんな話はいっぱい転がっている。
そして、彫刻で角の生えたじいさんの像がある。これは何だと聞いたら、これはモーセだと言う。なぜ角があるのだと言ったら、知らないけれども、昔からモーセには角があると言うのですね。何のことかと不思議に思いました。あれは実は角ではなくて、モーセの頭に光があたったという言葉が、たまたまご存じのとおりホテルを“HTL”と書くように、母音を省略する書き方がしてあった為に角と間違えたという事を向こうの専門家の人に聞いて、やっとわかったのです。モーセの頭に角があったのではなくて、モーセの頭に光があたったという事らしいのですが、ある時代まで角と理解して、角のあるモーセ像が随分書かれたり刻まれたりしたのだそうです。そんな事もヨーロッパに行った時の1つの楽しみです。「あ、角の生えたモーセがいた」と旧知に会ったように嬉しくなります。
そういう事が大阪に来た時には、物もなければ、またいろいろな説明をしてくれる人もいない状況なので、現在「難波の語り部」という変な、昔の大阪のことを話せる人たちを養成しております。この人たちに今度は降って湧いたように大阪の観光案内をするためのボランティア観光案内をしていただきたいという計画が進んでおります。
では、どんなことを観光案内でやっているかというので集めてみて驚いたのです。これはひどいです。今日はバス関係の方がいらっしゃったら、ぜひ専門家に点検してもらわないと、もう無茶苦茶が書いてあるのです。「大阪城は太閤秀吉がつくりました」と、嘘ではないが、案内しているコンクリート製のミニチュアの城を指差して言っている訳ですから、知らない人が見たら、あれは太閤秀吉がつくったと思ってしまいます。姫路城のほうが非常に大きいと、だけど本当は姫路城より大きかったというと、嘘つき、小さかったという話になってくるのです。中に入ってみたらコンクリート製だと、秀吉の頃からコンクリートがあったのかと、そんな話になってしまうのです。
つまり、秀吉がつくった城は夏の陣で焼けてしまっているのです。その後に徳川家康が松平忠明に命じてつくらせた大阪城があって、これが明治まできて日本陸軍の失火で焼いたのです。そして昭和になってから、市民が拠出して今のミニチュアをつくったのです。
そんな話を全部省略して、太閤秀吉は大阪城をつくりましたと言っている。いい加滅にしてくれよと言いたくなります。今、こういうことを補正をして、どういう説明をしたら皆さんに理解して

 

 

 

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